2007/08/25
政見放送2
おとといもラジオで、埼玉県知事選候補者の政見放送を聞いた。時間いっぱいまで、実績のみを並べたてる上田現知事。他の候補者と違うというより、各県の知事選でも現職が、こんな政見放送するなんて、めずらしいと思える。
不動産屋の広告で『日当たり良好』『駅から5分』『コンビニ近し』などがある似ている。
埼玉はこの世の楽園かのようにも聞こえる。
有権者に訴えるというより、消費者心理をくすぐるセールストークのようなのだ。
彼について、思い出したことがある。まだ衆議院時代のこと。
僕は、高柳俊哉さいたま市議の選挙の手伝いをしていた。
その事務所に上田氏自身が、現れたことがあった。
おもむろに「ポスターを送ったはずだが」と不満げに言った。
上田氏のポスターのことだ。確かに届いていたのだが、みんな完全に忘れていた。事務所には枝野幸男氏のポスターだけが、貼ってあった。彼は、そのことが気に入らなかったのか、終始仏頂面だった。
事務所内は、やくざの訪問を受けたかのような、緊張が走った。
当時の枝野氏と上田氏では、陽と陰。上田氏のポスターを貼ったところで、何の効果があるとも思えなかった。
しばらくして埼玉県知事に当選した上田氏は、当時市民受けしそうなことには、何でも公約に取り入れてていた。僕も住基ネットの見直しを、公約に掲げていたので、一票を投じた。
しかし結局、何もやらずに、完全に肩すかしを食らった。
質素、誠実、剛健といったそれまでの彼のイメージから、姑息なところが見え始めた。それと同時に右翼色を序々に出し始めた。
今回あらためて、政見放送を聞いて、彼はつくづく弱い人間なのだと感じた。
上田氏は、若かかりし頃に河野洋平氏が代表を務めた「新自由クラブ」から選挙に出ている。でもなかなか当選には至らなかった。やっと当選できても民主党では、エイズ問題を追求する二十代の枝野幸男氏にばかり、スポットライトがあたる。
いくら華がない政治家でも、弱々しく見えることは、選挙の結果に直結する。過去、落選の恐怖を存分に知っている彼は、度胸がない反面、国会で政府を厳しく追及することで、外見だけは強面で通してきた。
県知事にはなったが、得票は主に前知事の批判票だった。
選挙では住基ネットを見直すと言ったが、一向に何もしない。
選挙を強力に後押しした民主党の河村たかし氏からは「あの人は右翼だからダメですよ」とまで云われた。
純潔教育を謳う高橋史朗氏を埼玉県の教育委員に据えたのであれば、彼の考え方の共感しているはず。海外視察に行った県議が買春疑惑の行為したならば、怒り心頭にならなければ、おかしい。
しかし議会と対立して、青島前都知事や田中康夫前長野県知事のように選挙に負けることだけは、避けたい。となると、実に巧みなバランス感覚が働き、買春疑惑議員はお咎めなしとなった。
大した仕事をしない地方議員の中にも、市民は強い者になびく、と考えている人が多いと思う。上田氏はそのなびく風を見ながら、政界という荒波を乗り切ってきた。
今回の参院選の結果から、安倍カラーがついたものは、弱さを帯びた雰囲気ができあがりつつある。こんな時こそ、上田氏の年季の入ったバランス感覚を期待したい。(正)