2017/01/28
埼玉で、仲間とレンタカーを借りて反原発福島ツアーを行い、それにかかった費用を割り勘にしたところ、「白タク」容疑で逮捕された事件が1月18日起きました(
東京新聞埼玉版web)。
この事件に対し、脱原発・埼玉ML上で、「それはないでしょう」と話題となり、有志で相談したところ、「割り勘がなぜ白タク?」「冤罪だ」「そもそも犯罪じゃないし」「反原発への狙い撃ち、見せしめ」「過激派だったんでしょ、仲間と思われないように」「分断が狙いじゃないの」「共謀罪の先取り」「権力の横暴、不当弾圧だ」「なぜ起訴されていないのに実名報道、警察の言いなりだ」「人権侵害だ」「裁判官がおかしい、抗議だ」「県警に抗・検察・裁判所に抗議」「即時釈放を」等々、方向がかなりくい違う意見もありましたが、下のようなアピールとしてまとめました。
賛同くださる方は、名前と市区町村名(例:長内経男、さいたま市浦和区)を
メール→osanai@jca.apc.org か、Fax 048-833-6861 に、寄せてください。
反原発福島ツアーで“割り勘=白タク”逮捕はあり得ません 去る1月18日、埼玉県警が埼玉で反原発活動をしている3人を逮捕しました。
東京新聞埼玉版(1月19日付)によると、「反原発活動が目的とみられるツアーを企画し、無許可で参加者をワゴン車に乗せて運行したとして、県警は18日、道路運送法違反(一般旅客自動車運送事業の無許可経営)の疑いで、(中略)3容疑者を逮捕」し、その理由について「2015年9月5日、無許可でワゴン車に数人を乗せ、さいたま市大宮区から福島県楢葉町までを日帰りで往復し、1人あたり約4千円を受け取った」と報道しています。
道路運送法で禁止されているいわゆる「白タク行為」とは、許可を得ている道路運送業者の利益を意図的・反復的に侵犯することを指し、有り体にいえば業者の真似をして金を稼ぐ行為のことです。
しかし、遠出イベント等に際し、レンタカー代・ガソリン代・高速代等を利用者で割り勘にすることは、(業者の利益を侵したり金儲けの目的ではなく)広く一般的になされています。特に東日本大震災後、ボランティアでこうしたやり方で現地入りした例が数多くあり、反原発ツアーでの割り勘を「白タク」視、言い換えれば犯罪視することは著しく市民感覚にそぐいません。
埼玉県警がそのことを犯罪容疑として反原発ツアーに対してだけ被せる捜査手法に特定の意図を感じさせます。
また、さいたま地方裁判所が埼玉県警の逮捕状請求に唯々諾々と応じたことは、法の番人として市民感覚を逸脱した無責任極まりないことです。
そして、埼玉県警がこの事件の記者発表に際し、被逮捕者の個人情報を必要以上に明らかにしたことは意図的な印象誘導のそしりをまぬがれません。
また、関係者の政治的立場により法を拡大利用することは、法の公平性に著しく悖ります。
さらに、報道機関がそうした県警の発表を鵜呑みのまま記事としたことは、反原発などの社会正義のための活動を萎縮させることに加担する行為であり、被逮捕者の人権に回復しがたいダメージを与えています。
こうした割り勘を今回、捜査機関が「白タク」(犯罪視)としていることについて、「特定の人々への逮捕」と見過ごせば、いずれその口実は私たちの誰かに及ぶかも知れないという危惧を抱かざるを得ません。
・埼玉県警は捜査手法に割り勘=「白タク」を使わないでください。
・被逮捕者を直ちに釈放してくだい。
2017年1月26日
福島反原発ツアー“割り勘=白タク”逮捕を許さない市民の会
連絡先 090-1267-1252(長内経男) 090-3815-0199(堀本秀生)
1月25日勾留理由開示公判の報告
傍聴者の携帯・手荷物の強制預かり、ボディチェック1月25日、16時15分からの勾留理由開示公判。事前に午後3時すぎから、さいたま地裁ロビーに集合。聴券は49枚、抽選に並んだ人たちは約80名。15時40分から整理券の配布と抽選。傍聴が決まったものに対して、東京地裁からわざわざ呼び寄せられた廷吏たちが、傍聴者全員に対して携帯と手荷物を取り上げ、金属探知機で入念なボディチェックをしました。
たまたま当日午前には安保関連法への集団違憲訴訟、13時過ぎに埼玉県議会自民党県議団の政務活動費の住民訴訟、14時からは厚労省の生活保護費切り下げに対する集団訴訟がありました。裁判は、いずれも地裁C棟の105号法廷で、当事者や傍聴で、勾留理由開示公判の傍聴者と重なるメンバーが何人もいましたが、このような携帯・手荷物の強制預かりや傍聴者へのボディチェックは一切ありませんでした。
当然、他の裁判傍聴者からは、朝からダブル、トリプルで来いる傍聴者もいるのに、なぜこの事件だけ扱いが違うのか、105法廷の入口付近で納得できない傍聴者とそれを強制しようする廷吏たちとの間で大騒ぎとなりました。
廷吏たちの一方的な言葉で「裁判官の訴訟指揮」を根拠にしていましたが、当然、裁判官は現場に居ず、傍聴者は何ら事前告知も受けられず、強硬な振る舞いの廷吏たちが開き直った言葉と怒号だけで押し通そうとするから、事態の混乱を大きくしたと思います。最低でも異例な訴訟指揮を行う場合、法廷入口付近に文書による告示程度のことはすべきです。
裁判官は女性で來司直美(くるじなおみ)、ちなみに事件番号は「平成29年(む)10091」。勾留決定した裁判官は伊藤大地なのに。その裁判官は法と良心によって判断を下したはずなのに、その勾留理由の判断の開示について別人の裁判官が正しく開示できるのだろうかと不安になりました。
開廷前に、法廷の傍聴席に順次着席する際、多少私語が入りガヤガヤしていると、頭ごなしに「静粛」にと大音声。「まだ、始まっていないじゃないです」の声が飛ぶと、間髪をいれず、「改定します」と即決。断固たる決意が滲む裁判官の声と態度で法廷の空気が一瞬で緊張に包まれました。
公判はまず、裁判官が被3人の被勾留者の人定(まちがいなくその人であるかどうかを確かめること)として、1人ひとり「名前は? 住所は?」 尋ねるも 「黙して答えず」、その都度、「いいぞ」「よし」の声が飛ぶ中、検察官に人定の書類を読み上げさせました。
それから、弁護人が求釈明で聞こうとしていたのは、3人の被逮捕者が①逃亡のおそれ、②罪証隠滅のおそれがあるとして10日間の勾留決定がされたことについて、裁判官が勾留決定するにあたり、被逮捕者のどこにそのことを認めざるをえない事実があったのかを問いただそうとしたのでした。しかし、それに対して裁判官は、「求釈明に応える必要がない」と開き直り、「応えていない」と弁護士が回答を促すと「回答しないと応えた」と司法とも論理とも関係がないような無茶苦茶な言い方でさらに強硬に開き直り、弁護士の発言中に求釈明を打切りました。
眼前のこれらのやり取りが虚しく行われる中、思い余った傍聴席から「ちゃんと応えて」「不当逮捕」「ナンセンス」「こんなの裁判じゃない」「裁判官として恥ずかしくないの」など漏らした言葉に対して、裁判官は次々退廷命令を出し、廷吏たちが1人に4~5人で襲いかかり合計8人を強制排除しました。
次に弁護人2人から意見陳述。いかに今回の逮捕がおかしいか、という陳述です。始めの弁護人は、政府権力の諸機関が人々の闘いを政治的に抑圧するようなすごく大きな状況の流れの中に、今回の反原発ツアーの弾圧が位置づけられており、それは全く不当だとする趣旨を述べました。次の弁護人は、自分の家族と親戚の葬祭での帰省を例にとり、割り勘をおこなっていること、また10年位前、司法修習の同期で実施した水戸の偕楽園ツアーでは、幹事が裁判官だった事例を挙げ、いずれも今回のケースと同じではないか、これのどこが罪となるのか? 産経新聞では、県警が割り勘を白タクと摘発した背景として、はっきり反原発運動の存在を指摘しているではないか、と意見陳述しました。
この弁護人の意見陳述に裁判官は能面のように中空を凝視したままでした。閉廷は5時頃、傍聴者が一斉に立ち上がり、口々に裁判官を罵ったり、3人への激励の言葉をかけていました。